ARIA の世界観、そのルーツを推察する !?



このページでは、ウィキペディアやオフィシャルガイドにある内容と重複しても
仕方ないと思いまして、すでに話を熟知している玄人向けでいってみます。
しかも登場人物や名場面の紹介とかでもないので予めご了解ください。
ストレート勝負で作品を紹介するページは別の機会に用意しようと思います。
今回は球種で例えるならナックルか、あるいは危険球かも・・・退場?? ^ ^;



ARIA原作者の天野こずえ先生の作品といえば、現在「浪漫倶楽部」全6巻と
短編作品集2巻、「AQUA」全2巻、「ARIA」全12巻が書店で購入できます。
(あと「クレセントノイズ」全6巻も大きな中古書店なら入手可能です )

デビュー当時の作品が収められている短編作品集や浪漫倶楽部にみられる
ような学園ものを好んで描かれている理由の一つに、ある一人の漫画家の
影響を強く受けていると思われます。
その根拠についてですが、浪漫倶楽部の4巻に登場するハロウィンの精霊
ジャックが、某サッカー漫画O.F.の主要登場人物T.K.に酷似していることや、
その漫画の巻末の作者挨拶ページと、ARIA巻末の作者挨拶ページの書式が
かなり似ていること、更に同時期に連載したその漫画家の代表作の1つに
学園ものとして傑作が存在すること、多くの登場人物においてギャグ顔の
雰囲気が近い感じがすること etc. が挙げられます。

全くの偶然とは考え難いことから、おそらく先生が創作活動を始める何らかの
きっかけになるような影響を与えた師匠的な存在なのではないかと。

もちろん想像ですが、ARIA を含む天野先生が描く作品世界に多く見られる
人間味溢れるあたたかな描写や希望に満ちたキラキラとした雰囲気が、根底
を辿ると師匠から先生に引き継がれたのかもしれません。
もしそうだとすれば、お二方が作品のテーマの一つ“アリアカンパニーの軌跡”
ともシンクロして見えてくるのですが・・・いかがでしょう?

一般にデビュー作や大ヒットをする以前の作品では、尊敬する作者や作品への
オマージュとして、脇役に似せたキャラを登場させたり、名前をもじってみたり、
ギャグネタとしてパロディ化したりするのは、どのジャンルでも普通に目にする
光景だと思います。
それを真似と捉えるか、寧ろ親しみが湧くと感じるかは、人それぞれの解釈で
大いに結構だと思います。私などはただ嬉しくて仕方ありませんでしたし。^ ^;
両作家の作品のファンであれば、気づかれた方も多いと思います。

(注) これから更に長文を弄する前に一言お断りを入れたいのですが、決して
先生を批判するために考察しているのではありません。
素人である私の文章表現力が未熟な為に、そのように誤解されてしまうことも
あるかもしれませんが、そういったことも考慮した上で論説していきますので、
ご理解いただきたくお願いします。m(_ _)m

さてさて、いよいよこの辺りで表題にもあるように、ARIAの世界観のルーツに
迫ってみようと思います。
ヒロインである灯里ちゃんが、新天地ネオヴェネツィアで新しい体験をすると
よく口にする『摩訶不思議♪』という言葉や、アクアの気候を制御するユニット
『浮き島』の設定から参考資料にされたと思われる1冊の本が想像できます。

講談社現代新書 「ヴェネツィア 水上の迷宮都市」という書籍があります。
筆者は(当時のプロフィール)法政大学工学部建築学科教授の陣内秀信氏で
初版は1992年なので、 ARIAの発表よりも遥かに前です。
ちなみに私が所持しているのは初版本です。当時書店で購入した本の中で
特にお気に入りの1冊です。

中でも「第1章 浮島」「第2章 迷宮」を読み直して改めて実感しました。
ヴェネツィア自体を建築構造の面から 浮島 と称する箇所が多く見受けられ
本文からその単語が強いインスピレーションを与えるキーワードになっている
印象を受けます。
それと要所に『摩訶不思議』という言葉がとても印象的に使われている点で、
今回は作者前書きにあたる「はじめに」から一例だけ引用しますが
『以前は、この都市の摩訶不思議な形態にもっぱら興味があり、運河や道や
広場や住宅の関係を読み解くことに没頭した。』といった感じです。

またARIAの(原作のみですが)ネオヴェネツィアで噂される七不思議を一人で
全て体験してしまうと・・・というエピソードがありますが、この書籍の第2章の
ヴェネツィアを迷宮空間として印象づける文章も引用してご紹介します。

『外からは見通せず、よそ者にはおよそ理解不能な迷宮の空間は、この先には
何があるのだろうという期待を秘めた不安感や緊張感を与えるものである。
ちょっと躊躇されるが、ともかく手探りで先へ進んで奥の世界を覗いてみたく
なるなるようなぬくもりのある不思議な懐かしさを感じさせる。』

こんな感じで不思議という単語は更に数えるのがちょっと大変なぐらい随所に
ちりばめられています。灯里ちゃんが“不思議=ステキな体験”と感じるのも
この本を読んで印象に留めておくと、彼女と同じ目線で共感できてしまいます。

他にも関連性を想像させてくれる箇所はたくさんあるのですが名著への敬意が
損なわれてしまうのも残念なことなので引用はこの辺りで。

当然他にも私のような素人が存在も知らないような文献をいろいろ研究されて
ARIA という大傑作が生まれたのだと思いますが、それらの参考資料の中に
この書籍が含まれている
と、かなりの確信をもって推察しております。

また、作中でも例えば路地の散歩が趣味の後輩ちゃんや博識なアリシアさんが
ネオヴェネツィアの名所や歴史をさりげなく解説するような場面でも、もしかしたら
この書籍にちりばめられたエッセンスが関係してるかもしれません。
(そうだったらいいな・・・という身内びいきみたいなものなのかなぁ?)

昔からちょっとしたヴェネツィア通を自認していた者としては、ARIA という作品
にまず出会えたことが何より嬉しくて大袈裟でなく奇跡を感じました。
それにもまして、この作品を通じてヴェネツィアに興味を持つ人が増えることに
地元住民でも観光局員でもない遥か極東の日本人である私が何故これ程に
大きな喜びを感じるのか・・・これこそまさに摩訶不思議ですね。




今回ご紹介した書籍 「ヴェネツィア 水上の迷宮都市」 陣内秀信 著 は
一般の書店では入手困難な1冊となっています。ですが例えばアマゾンで
検索してもらうと購入可能です。新品も僅かですが数点あるようです。
本文中には、(たくさんの写真や図版が適確に配されてはいるのですが)
カラー印刷の箇所は全くありません。それにも関わらず読み進めるほどに
ヴェネツィアの四季を彩る様々なイベントや美しい情景が次々と脳裏に浮かび
ちょっとした不思議体験ができてしまうぐらい中身が充実しています。
また都市構造の視点でも世界で唯一無二の都と呼ばれる由縁が理解できて
きっと読み終える頃にはこの街に親近感を感じられるようになるはずです。



ヴェネツィアの建国から繁栄に至る歴史に興味を持たれた方にお勧めなのが
中央公論社 「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年」塩野七生 著 です。
初版は1980年で単行本全2巻。新潮社から文庫本タイプで再販されてるので
こちらは容易に書店で入手可能です。読破するにはかなりの文章量ですが、
内容は非常に充実しています。ヴェネツィアが地中海貿易で莫大な富を築いた
背景やヴェネツィア海軍がどれほど優秀であったかなど、世界遺産の番組や
旅行案内の雑誌を読んでも決して明かされない実像が見えてくるはずです。
私的には「ヴェネツィア誕生」と「聖地巡礼パック旅行」の章がお気に入りです。



冒頭で紹介したお師匠様(!?)の学園もの作品について少しだけ補足します。
日本で生まれアメリカで育ったハーフの主人公が、故郷に住む妹の通う高校の
教師として活躍するちょっとユニークな設定をもったお話で、学園ものの漫画や
ドラマが好きな人だったら間違いなくK.O.されるはずです。
原作コミック以外のメディアは確か無いはずなので、知られざる不朽の名作と
言えるかもしれません。
作品を読んでみたくなった方は、前述のO.F.をヒントに探してみてください。
ARIAを含む天野先生ワールドのルーツなのでは?と、私が駄文を弄したくなる
気持ちがきっとご理解いただけるはずです。
探したけれど見つからないとお困りの方は下記アドレスまでメールしてください。
もったいぶらずにお教えしますので ^ ^;
■■■■■■■■■■■■■■■■■■neco1996@hotmail.co.jp



ファン待望の天野先生の最新作「あまんちゅ!」(コミックブレイド連載中)が
単行本1巻発売中です。宣伝用キャッチコピーを引用してみます。
「日常、ときどきダイビング。」
[ARIA]グランドフィナーレから一年半・・・
天野こずえが贈る、新たな蒼の物語。


Last Update 2009.10.31

上記の日付で加筆・修正は完了しました。( Version 1.00 )

MOTEPPI 著


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